業務委託や協力会社との契約を結ぶ際、「請負」「準委任」「派遣」のどれを選べばいいのか悩む場面は多いものです。実態に合わない契約形態を選ぶと、偽装請負や違法派遣と見なされるリスクも。
本記事では、それぞれの契約形態の違い・メリットデメリット・OK/NG行為を、実務の観点からわかりやすく解説します。


契約形態の違い
契約形態 | 契約の目的 | 指揮命令権 | 成果の有無 | 一般的な対価の形 |
---|---|---|---|---|
請負契約 | 成果物の完成 | なし | 必要 | 成果物に対する報酬 |
準委任契約 | 業務の遂行 | 原則なし(依頼ベース) | 不要 | 作業時間や業務内容に応じた報酬 |
派遣契約 | 労働力の提供 | あり(派遣先) | 不要 | 労働時間に応じた報酬(時給等) |

メリット・デメリット比較
契約形態 | メリット | デメリット |
---|---|---|
請負契約 | 成果で評価が明確/費用コントロールしやすい | 成果の定義が曖昧だとトラブル/管理が難しい |
準委任契約 | 柔軟な業務支援が可能/IT業界で実績豊富 | 成果責任が曖昧/偽装請負のリスク |
派遣契約 | 指揮命令が可能/人員調整がしやすい | 派遣法の規制あり/期間・業務内容に制限 |

契約ごとの「OKな行為・NGな行為」
◆ 請負契約
OKな行為:納期や成果物仕様を明確に定める 成果物の検収を行う
NGな行為:日常的な業務指示(「今日は何をやるか」「どの順で作業するか」) 勤怠管理(出退勤時間の確認など)
◆ 準委任契約(SES契約など)
OKな行為:業務依頼・相談ベースでの調整(例:「この業務、お願いできますか?」) 進捗状況の確認、成果報告の要求
NGな行為:「9時に出社して」「今日は帰っていい」などの時間管理 作業手順や方法の明示的な指示(例:「この手順で作業してください」)
◆ 派遣契約
OKな行為:作業内容の明確な指示・命令 勤怠・業務管理、日報の提出など
NGな行為:許可のない業務への従事(例:派遣契約にない部署への配置換え) 3年以上の継続的派遣(※原則として制限あり)
実態に合った契約を選ばないとどうなる?
実態が派遣なのに準委任で契約 → 偽装請負と判断され、厚労省からの是正勧告・行政指導対象に 請負なのに委託元が指示命令 → 実質労働契約と認定されるリスク(社会保険や労働法の対象に)


まとめ:迷ったら「実態重視」で選ぶ
実態 | 適切な契約形態 |
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成果物を納品させたい | 請負契約 |
業務支援や作業補助を常駐で行わせたい | 準委任契約(SES) |
業務指示や勤怠管理を直接行いたい | 派遣契約(要許可) |
契約形態は“書面”ではなく“実態”で判断されます。
契約書だけ整っていても、現場で労務管理や業務命令が行われていればアウトです。