業務委託契約の一種である「準委任契約」。
システム開発や保守運用、コンサルティングなどの現場で広く使われています。
しかし、この契約形態では「勤務時間」を明記すべきではないという点をご存じでしょうか。
■ 準委任契約とは
準委任契約とは、成果物の納品ではなく、一定の業務遂行そのものを委託する契約です。
民法第656条に基づき、受託者(委託を受ける側)は「善良なる管理者の注意義務」をもって業務を遂行します。
たとえば、
システムの保守・監視 社内ツールの改修 データ分析・業務支援
といった業務は、成果物を納めるよりも、継続的な作業を提供するタイプの業務のため、準委任契約に分類されます。
■ 勤務時間を契約書に記載してはいけない理由
準委任契約は「労働契約」ではないため、
本来、委託先の作業時間や勤務場所を発注側が拘束することはできません。
勤務時間(例:8:40〜17:10)を明記してしまうと、
形式上は業務委託であっても実態は雇用関係に近くなるリスクが生じます。
このような状態を「偽装請負」と呼び、
労働基準監督署から指摘を受ける可能性もあります。
■ 実務でよくある“グレーゾーン”
現場では、「常駐型準委任契約」として、
協力会社のエンジニアが顧客先に常駐し、発注元社員と同じような勤務をしているケースがあります。
たとえば契約書や見積書に以下のような記載がある場合:
定時:8時40分~17時10分(休憩1時間)
1日7.5時間として換算
このような記載は、本来の準委任契約の趣旨に反するものです。
発注側が勤務時間を拘束していると見なされ、労働契約上の義務(残業代支払いなど)が発生するリスクがあります。
■ 昼休憩を取らせないのは労基法違反の可能性も
さらに、昼休憩を取らせずに業務を行わせている場合、
それが実質的な「労働」であるなら、労働基準法第34条違反となる可能性があります。
労働基準法では、
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えること。
と明記されています。
業務委託であっても、発注側が「時間を拘束」している状態なら、
この規定が適用される余地があります。
■ 契約の見直しとリスク回避策
もし、見積書や業務内容確認書に「定時」「7.5時間」などの表記がある場合は、
契約の見直しを行うべきです。
改善例:
「稼働目安:1日7.5時間程度」といった“参考値”に留める 「業務遂行時間は受託者の裁量により決定する」と明記する 実際の業務報告書には「成果」「実施内容」を中心に記載する
■ 過去の未実施分・過払い分はどうなる?
「休憩を取っていなかった」「定時に満たなかった」などのケースでは、
過去の請求内容に誤りがある可能性もあります。
ただし、準委任契約は民法上の契約のため、
「労働基準法による賃金返還」とは異なり、返金や徴求には双方合意が必要です。
一方的な返金請求はトラブルにつながるため、
まずは事実関係の確認と、契約上の取り決めを整理することが重要です。
■ まとめ
契約形態
準委任契約は「成果」ではなく「業務遂行」を委託する
勤務時間
原則、拘束してはいけない(定時明記はリスク)
昼休憩
実質的に拘束していれば労基法違反の可能性あり
見直し
契約書・見積書・業務報告書の整合性を取る
トラブル防止
双方の合意と証拠整理が重要
まとめると:
準委任契約では、「勤務時間」や「定時」といった表現を使うほど、
実態が労働契約に近づき、リスクが高まります。
法的にも実務的にも、時間ではなく「成果・遂行状況」を基準に管理するのが望ましいでしょう。

